ぎこ記

映画や音楽多め。あとどーでもいいひとりごち

映画「あなたの旅立ち、綴ります」人生はやり直せない、でも見直してみ?

原題「The Last Word」です、念のため(邦題問題)。

ちょっとネタバレかもしれないのであらかじめご承知くださいませ。

 

 

老婦人ハリエットは自分を変えたか?
他人のお悔やみ記事に悼まれる死に憧れてこれまでの自分を恥じたか?

 

そんなことはしない。

最後まで自分のやりたい様行動し、他人をコントロールしようとし、そしてやり遂げた。
誰もが「憎たらしい」「大嫌い」と言っていたはずの彼女がいなくなることが、悲しくて寂しくて仕方がなくなる。第三者の私たちも、スクリーンの中の「嫌われるババア」を笑ってるけど、いつのまにか間もなく訪れる終わりを思って寂しさがこみ上げる。

だからといって、訃報記者アンと同じ気持ちではない。ハリエットの言葉が、私自身へ問いかける。

自分は自分の思う通りに存在しているか。臆病で失敗に怯えて生きていないか。

 

彼女は失敗しなかったことが失敗だったと思ったか?

 

それもNo。

誰にも屈しない、嫌われることを恐れない、怖いのは自分を抑えること、強くあること。そんな彼女の生き様に精神疾患の病名がつこうが関係ない。そして他者を許すことが出来なくても、彼女はいつも一生懸命に愛していた。

 

書いていて思う。彼女は曖昧さを嫌がった。愛想笑いや妥協や、なんとなく感じる恐怖、そういうものを打ち消して自分の感じる「自分のあるべき道」を突き進んだ。当然発生する軋轢にも動じない。自分を信じるからだ。

心のままに泣いたり笑ったりすることを忘れるほどに懸命に生きて、最後の最後に最大の難関を乗り越え望みを叶えて、涙を流し、笑って、そして去って行く。

 

なんかもうね、こんな完璧な人生ある?

それにまんまと乗せられてシアターで号泣を押し殺して窒息しかける私ってもーーーぅ……

 

あとね。
音楽って素晴らしい。勝手に人生を語ってくれる、悲しくても楽しくても、歌ってくれる。勝手に突き動かしてくれる。リズムに乗らせ、踊らせて、笑わせて、そして泣かせる。音楽って年齢も性別も立場も肌の色も全然関係なくて、でも心に強く関係して来る。

素晴らしいよ。本当に音楽がたまらなく愛しいと思う。

実のところ、劇中に流れる楽曲はひとつも知らなかったんだけど(古いロックは全く聴いてない)、エンドロールでそれらのタイトルを見て「ああああすべての場面にぴっっっったりぃぃぃ!!」てまた泣くわけ。

 


もうほんと泣いたーーーーー

 

 

この感情は今この歳だからこそだとつくづく思うよ。同じようにアンと同じ年頃の人はその歳なりに別に心に来るものがあると思う。

私はまだ老婦人じゃないけれど、そろそろ人生の最期を考えて生き方を考え直してもいい頃。だからこそ、ハリエットにもアンにも投影しない、自分自身を見つめてまた辛かったりするんだな…くそぅぅぅっ!!

 

実は3年もお世話になった同年代のボイトレの先生が、この春スクールを退職される。彼女は「この先の残りの人生で『あとどれくらい』『何ができるか』を考えて、『やりたいこと』にきちんと優先順位をつけて活動をしていこうと思う」とおっしゃっていた。

そういうことだ。残りの人生が、時間が想像できるところに来たのだ。ひとは限られた時間を生きてる。その中で何をしたいのか、どう生きたいのか、見直す時が来ている。

と言っても私は、「なぜ生きているのか」を考えはしても「何もやり遂げたいこと」もなく漫然と生きていて「いつ死んでもかめへんよ」という人生なのでそれほど大きく変化を考えることもないのである…罰当たりかもしれない。私は生きてしまっているので死ぬまでは生きるよという感じで…いやいや、そこをよく考えろよ!てう話なんだけどな。

 

そう言えば、先日こちらで読者になっている方の下記のエントリを拝読した。震災を思うとき、こんな自分なのでどうしても我が身と結びつけることが出来ないできた。7年目の今日、この映画を鑑賞したことはなんだか不思議なものだ。
ui0723.hatenablog.com

 

 

ああもう、この映画、なんて上手いんだ!!何もかもが!!

 

 

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