映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
すっっっごい沁みました…
あの、まずですね、私、イギリスの話だと思っててですね。だって”マンチェスター”つって”マンチェスターユナイテッド”を連想しない人っています?
私サッカー全然興味ないけど、マンチェスターがイギリスだってことくらい知ってるし!
ボストンで働く主人公のリーに緊急連絡が入り「1時間半で着く」というセリフから脳内世界地図大混乱を起こしていました。
何か書こうと思うとまずそこから…と調べてみて衝撃でした(自分の無知に)。
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」っていう(アメリカの)町でした。
ぅぅ。
道理で”fu*kin'””fuc*in'”て会話の大半がこれだと思いましたよ!おかしい、イギリス映画でこんなはずない、おかしいって。しかもイギリス英語は割りと聞き取れる場合が多いのに全然ダメだしなんで…
って思ってたら完全にアメリカの話ですやん!!
私、高卒です。卒業当時の偏差値は多分50台…地理や歴史にも全く無関心でした。
実家のトイレに子供の頃から日本地図や世界地図が貼られていたので、地図バカとかじゃないんです。方向感覚もあるし道路地図も読めますし。ただ海外の都市や町まではそんなに、はい。興味もそんなに、ぇぇ…しかもそんな田舎の話…知らんがな。
てことでググりました。(丸印などの加工してません)
googlemapより
リーはボストンで暮らしています。(地図下方をご覧ください。)
そして故郷はマンチェスターバイザシー。(ボストンから海沿いに北上して湾を越えたところにあります。)
車でだいたい1時間15分~1時間30分だそうです。(この15分の差に何が、といういらん拘りの些細な会話あり。)
これがアメリカの東側ってことは私でも分かりますが、分からない人は是非これを機会にニューヨークを確認してみましょう!(なぜ)(画像トリミング外です)
ボストンから海沿いを今度は南下すると見えてきますので、何なら更に知ってるアメリカ大都市の位置くらいは知ってても損はないですよ?グローバルな世の中ですし。いや生きていくのには大して困らないですけど。
どうでもいいですけど、最初にイギリス感覚をすっかり払しょくしていれば冒頭の脳内大混乱を防げたんですね…本当に無知はつらい。
そんなこんな、アカデミー賞で相変わらずベン・アフレックとマット・デイモンがキャッキャしてたのはこの作品でケイシー・アフレックが主演男優賞を受賞したからです。
マット・デイモン、ケイシー・アフレック、ベン・アフレック - Lester Cohen / WireImage / Getty Images
マットもベンもうっざww
だれがこの人たちがハンサムとかイケメンとか言い出したんや。へちゃとアゴ!!!
まあ、ケイシーもタイプではないんですけどねー。関連記事を追うとなかなかにおイタしてらっしゃる弟クン…あらぁ…w
(日本公開予告はちょっと分かりやすすぎたので字幕なしのあっちのやつ引っ張ってきました)
ほんっと男は子どもだよなぁ。
成長しないよなぁ。
父親にはなれるんだけど、大人になりきれない生き物なのでは…。
過去の悲劇にこんな風になってしまう気持ちは分かるし、滂沱の如く涙する(この表現覚えたて!w)んですけど。
チャンスはあるんです、乗り越えるためのチャンスは。兄の死、甥っ子の成長とパニック、元妻との再会と許し合い…
そのチャンスが一度に次々と彼にぶつかってくるという物語なのですが。
なのにどうしても越えられない。
女はねー…。皆が皆そうじゃないかもしれないけど、少なくともこの元妻も(お兄さんの荒くれ元妻も)新しい出会いや再びの命などで切り替えていくことが出来る、これが生命力なのかなと思わせるほどの変化を見せる。強いのですよ、うん。
だからこそ元妻も号泣して崩れ落ちそうになりながらも必死になって謝罪し、お互い壊れた心を認め合おうとしてくれたのです。
でも男の子なリーはそれが出来ない。心が凍りついたまま、向き合うことが出来ない…。
過去を振り返るシーンはほとんどこのアダージョト短調が…短調です。そうです、この上なく物悲しい音楽が流れ続けるのです…。これ引用する作業だけで涙腺と喉の奥が震えて嗚咽しそうです…ずるい。音楽ずるすぎぇぐぅう、う。う。うううう
関連動画ももうただただあああああ…
今作の重苦しい空気はほぼ90%、このサントラのチョイスのせいです!(つっても、腰が砕けそうな10代ロックバンドのアレとかもう別な意味で痛くて泣ける音楽も入りますので、緩急ありすぎますけども。)
↑ポスターにもなっているのはそのやりとりのカット風
許されたとしてもその自分もやはり許せない。
溜め込んだ涙すら上手に流すことが出来ない。
観ているこっちもつらくてつらくて、私の右側の妙に息の荒いおじさんも左側のメガネ女子も涙しています。
ここで、ここで吐き出せば、泣いて流してしまえば…そんな場面が続くのに、リーは私たちを裏切り続けます。
でもほんの少し。ほんの1歩?半歩?
故郷の海に船を出したり(船のヘリに腰かけながら見せた笑顔にこれまた滂沱のご涙)、葬儀の後甥っ子とボールを投げ合ってこれからのことを話したり、ちょっとずつちょっとずつ変化の兆しが見える、それが救いでした。
そう思わせたところで幕が下ります。
エンドロールに入る前に、マンチェスターバイザシーの海沿いの景色が優しく流れます。
良いのか悪いのか、癒しなのか許しなのか、故郷はずっと変わらない。故郷は故郷であり続けます。
住み人の喜びも悲しみも全て内包しています。
救いなのかな。リーにとっての故郷は。いつかそうなるのかな…
アカデミー作品賞を受賞した「ムーンライト」が過去との和解を遂げる物語だとしたら、こちらは「遂げられてない」物語です。
全く違う過去なので比較することは憚られるけれど。
「癒えない傷も忘れられない痛みも。その心ごと生きていく。」
乗り越えなくてもいいものなのか、それとも小さな歩みがあれば、ゆっくりと違和感なくなって、それでも心に置いて生きられるものなのか、でもそうしたら彼にはどんな未来があるのか…
いつまでもいつまでも、私はその疑問が消えなかったです。
”気の持ちよう”とか、誰かに委ねればいいとか、時が解決するとかそんな話ではない悲劇は、リアルにもあるでしょう。
絶対に変えられない過去という点ではどんなことだってそうだけど、そんな時にどうすればいいのか、当事者にも周囲の人間にもきっと分からないことです。
両手の置き場所も、表情や言葉もどう出せばいいのかも分からず、いつも少し首を少し傾げて背中を丸めて立ち尽くすリーの姿が、まだ私の中にいます…
そうそう、今作も登場人物みんないい人ばかり。噂を立てたり後ろ指を指す人も、喧嘩っ早い人もいるけれど、それが根っからの悪人として描かれてるわけではないので、この点もやっぱりいい映画だなぁって思える大きな部分です、私にとっては。