ぎこ記

映画や音楽多め。あとどーでもいいひとりごち

映画「ムーンライト」(2017年アカデミー賞作品賞受賞作品)

ブログタイトルを「涙腺バカがゆく」とかにしようかと思い始めています…

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何度か書いてるかもしれないけど、私は様々なことに差別意識はあまり持っていないつもりでいます。それでも好きではないもの、苦手なものはどうしようもなくあることを認めています。この映画で言えば主要な情報はほとんど当てはまりました。

だからアカデミー賞授賞式のハプニングを楽しみつつも全く観る予定はありませんでした。

しかし観ました。

黒人、暴力や犯罪、クスリ、親との愛憎、レゲエやヒップホップ…

 

全て苦もなく私の中に流れ込んで染み込んでいきました。


私のこの苦手意識は、小さな主人公を優しく慈愛に満ちた笑顔と言葉とチカラで支えてくれるフアンという登場人物の存在で一気に吹き飛びました。
「最初の人類は黒人だ。世界中には黒人がいっぱいいるんだ。」
このセリフに軽いショックを受けました。
小さな島国で同じ民族に囲まれてるというだけの安心感から来る苦手意識など、ただ自分を何かに縛り付けてるだけなんだなぁと。つまらない小さなことだけど、「苦手だ」とわざわざ言うのって恥ずかしいかも…

んー、いやちょっと整理はつかないけど。


不思議だったのは、黒人同士であって親しい人に「ニガー」や「ブラック」という呼称を使うということです。
私にはそう言った言葉は白人が黒人を侮蔑するものだという認識がありました。日本人で言えば「ジャップ」とか「イエローモンキー」とか?これ、古い情報なんかしらん?

主人公の大切な友人との会話の中に
「ヘイ、ニガー!」
「なんでそう呼ぶの?」
「あだ名だよ。なんだよ、いやなの?」
「ううんそうじゃないけど。あだ名で呼ぶヤツなんて他にいないし、変じゃん。」
ていうのがありまして。

そこ?!て首が傾く…。しかもそれ以上続かない会話。傾き続ける私の首と頭。

その間の中には、あだ名で呼んでくれる親しみの余韻がじわわわわわんと流れていて…。


子供の頃に親からの十分な愛情を得られない、学校では度を過ぎたイジメ、自分が一般的ではない種の性愛を持っているかもしれない、孤独の中でやっと出会えた信頼できると思った大人が実は自分の環境を壊す仕事をしていた、信じていた友達に裏切られる…

 

これらはドラマの要素としてはよくあるし、私は自分の経験を重ねて感情移入をしてしまうタイプなのだけど、苦手意識を除いてもそんなに感情移入できるかなぁと思っていたのが嘘のように、にっこりしたり涙したりを繰り返してました。

 

フアンが海で泳ぎを教えるシーンは本当に素晴らしくて感動しました。
個人的に水が好き、水面の目線がとても好きなのです。水中と空を見るあのカメラワーク。

主人公を取り巻く環境がそのまま水中の浮遊感と、天空の確たる存在、不安と安心が波の動きに左右される感覚として伝わります。
フアンの力強い腕の支えと教えによって泳ぎ方を学び楽しみ、波と遊ぶようになる主人公。
こっちまで嬉しくなって笑顔になるのに、同時に涙が溢れます。ハイ、涙腺バカ始動。

 

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IN THE ARTICLE SIDEBAR

期待、信頼、疑い、裏切り、失望その繰り返しの中で主人公は成長していきます。

 

酷い目に遭わされてきた母親と、大人になって向き合った時に
「愛してくれなくていい。あなたに愛が必要な時に愛せなかったから。それでも愛している。」
という涙にももう涙腺崩壊。

謝罪でもあり、言葉と裏腹な「愛の乞い」でもある気がしました。屈強な身体と人を脅かす様な容姿になった主人公から水滴となってあふれる涙は、少年の時の傷つきやすく、不器用な心が変わらずそこにあることを教えてくれます。

どんな目に遭っても人はそんなに変わらないのかもしれない、いや、本当に大事な自分を守るための筋肉や金歯なのかもしれない。

 

「人生って怒りも悲しみも苦しみもときめきも許しも懺悔も呑み込む波」なのだなぁと噛みしめました。

 

感動シーンをうっかりネタバレしてる気がしますが(笑)

実のところ本当に良かったのは、とにかく恋心がくすぐられて、下手な少女漫画の実写版なんかよりずっっと胸に迫り、

苦しくて切なくて、どうかこの時間を、この想いの未来を、2度と若さゆえのアクシデントでぶち壊さないでと必死に祈るラスト20分ほど。

若過ぎて上手く行かなかった、忘れられなかった気持ちの行方を救って欲しいとハラハラが止まらない。

街のざわめきも

雨音も風も

ドアの隙間も

音楽も

辿り着く波の音が聞こえる部屋の穏やかさに心が震えて
怖くて言い出せなくて

愛しくて心が揺れて
目の前にいる、そこにいる、

手を伸ばせば触れられるその愛しい存在が

また消えるのが怖くて震えてる

 

このラストシーンの風景や音や気持ちを、私の中にある微かな乙女の恋心を引っ張り出して重ねてみたら、誰かと共有したいと思ってしまったよ。

好きな人を思い続けてる自分。おばさんにもあったよ!

 

 

そしてこの歌詞が思い出された。大好きなこの片想いの歌詞。

 

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「後ろ姿」柴田淳 より

 

ステキなものに出会った時、

「伝えたい、早く伝えたい、あの人に一番に」

そう思うことありませんか?

そういう恋の様な気持ちを最後に何度も何度も胸に注入された気がしました。

きゅーんきゅーーーぅぅぅん

 


最近、「これは観ないでいいや」と思っていても結局観ているという映画が増えてきました。今回もその理由はこちらのコラムです。

www.machikado-creative.jp

ツイッターでたまたま見かけて、ふざけたツイートや大喜利の仕切りやフォロワーさんとの絡みが面白くてフォローしました。そしてたまに大喜利に参加したり大笑いでRTしたり、楽しませていただいていました。
このコラムを不定期に掲載されていることを知り、壮大な文字数に詰め込まれた情報はツイッターとは別の魅力に満ちていて読みふけるようになりました。
とっくに公開を終えた映画を観たくなったり、噂の映画について自分の感想と重ねたり、深さを知ったり。

今回も「なしやな」と思っていた作品でしたが、黒人の映画がアカデミー賞、そしてブラッド・ピットがプロデューサーとして参加しているというのもあり、拝読…
お!改ページが導入されてました!!(とにかく長いんですよ、私のなんてカスみたいなもんですよ)
そして2ページ目で中止。まず観よう!となりました。

これを読み返してまたうるうるしてしまいます。
完全ネタバレコラムですが、私のようにただ感情に任せてうわ言を綴るブログよりもうーんと分かり易く、そして深く作品を味わえます。
観てない方も観た気になれます。